BLOG ブログ
元社会福祉士の視点から考える「Webアクセシビリティ」とは?
zeroichi
自己紹介
初めまして。元社会福祉士、WebデザイナーのMです。
今回は、弊社でも取り組みを強化している、最近なにかと話題の「Webアクセシビリティ」について、前職の知識も活かしながら、お話しできればと思います。
Webアクセシビリティとは?
Webアクセシビリティとは「高齢者や、視覚や聴覚に障害のある方などを含む、Webを利用するすべての人が、Webで提供されている情報にアクセスし、さまざまな環境でサービスや機能を利用できること」を意味します。
※Accessibleは、近づきやすい・利用できると訳すことができますが、分解して考えると「access」+「able」、つまり「アクセスが可能」ということです。
Webアクセシビリティの根拠となる法律は?
少し堅苦しい話になるかもしれませんが、そもそもなぜWebアクセシビリティが話題に上がるようになったかについてお話しします。
Webアクセシビリティの根拠となる法律の中で最も重要なのが「障害者差別解消法」という法律です。
「障害者差別解消法」は、「障害を理由とする差別を解消し、誰もが分け隔てなく共生する社会を実現すること」を目的として施行された法律です。
この法律に基づいたWebアクセシビリティの義務は、元々は公的機関のホームページが対象であり、民間企業は努力義務とされていました。
しかし、2021年5月の障害者差別解消法の改正に伴い、民間企業のホームページも公布日(2021年6月4日)から3年以内に、つまり2024年6月4日までにはWebアクセシビリティを確保したホームページを制作しなければならなくなりました。
努力義務から、義務への昇格ということになります。
法改正により、これまで努力義務だった民間企業が一斉に対応に追われているため、最近Webアクセシビリティというワードをよく耳にするということですね。
※余談ですが、社会福祉士の試験勉強の際「障害者差別解消法」の歴史について、ひたすら勉強したもので、過去の経験は一つも無駄にならないんだなぁと思ったりしました。いやまぁ暗記しただけでしたが。。。
発達障害のあるお子さんの支援をしていた時の経験から思うこと
「Webアクセシビリティ」というと、聴覚障害のある方や視覚障害のある方が利用しやすくなるための対応と捉えられがちな側面があると思います。
しかし、ふと自身の経験を振り返った時にそういえば…と気づいたことがありました。
私は以前、発達障害のあるお子さんの学習支援をしていたことがあります。
発達障害には、自閉スペクトラム症、ADHD、学習障害などが含まれます。
私は特に、ADHDのあるお子さんの支援をしていたのですが、一緒に勉強をしている中で意識していたこととして「情報の見せ方の工夫」でした。
ADHDのあるお子さんに対する基本姿勢として、「情報量を絞り、焦点を合わせやすくし、スムーズな理解へ繋げる」という点が挙げられますが、
これは、膨大な情報量に混乱することが多いというADHDの特性に合わせたものです。
例えば、ずらっと複数並んでいる設問を、一問ずつハサミで切り離したり、他の設問を紙で隠して、いま解くべき問題に集中してもらうといったものです。
また、色分けをして、各項目をグループ化することも意識していました。
パソコンやタブレット端末を使用して授業をすることもあったのですが、その際に音声や動画が自動再生されてしまうことで理解に集中できないという声もあり、お子さん自身のタイミングで再生ができるような教材選びをしていました。
他にも、感覚過敏という、匂いや音などの刺激にとても敏感な特性を併せ持つお子さんも少なくありません。
感覚過敏があると、色や文字の影響でテキストに読みにくさを感じたり、画像や動画の光が眩しくて画面を見ることができないこともあり、
お子さんの特性に応じたテキスト選び、画面を見やすくするための光の調整などもしていました。
ここで、鋭い方はピンと来たかもしれません。
JIS規格「JIS X 8341-3:2016」の基準の中に、全体の見やすさ、色やテキスト、動画や音声に関する項目があります。
前述の通り、Webアクセシビリティは「Webを利用するすべての人」のために必要なものです。
Webアクセシビリティのガイドラインを確認していると、発達障害のお子さんを支援していた際に意識していた点と重なる部分が多く、
初めは難しく捉えていたWebアクセシビリティを柔らかく捉えることができました。
※高齢者や聴覚・視覚障害のある方ではなく、今回は発達障害のある方にフォーカスを当て「すべての人」にフォーカスしていないじゃないかとの声が聞こえてきそうですが、そうではありません↓↓↓
Webアクセシビリティを「自分ゴト化」する
普段ネットを利用する際に、
- このサイト見にくいな。
- 文字が小さいな。
- 色が薄くて読みにくいな。
- 動きが多すぎて、目が疲れる。
- 情報が詰まりすぎていて、どこで区切ったら良いのかわからない。
こうした経験をされた方も多いのではないでしょうか?
発達障害のあるお子さんの支援をしていた際に、常々感じていたことがあります。
様々な情報に触れている中で、程度の差はあっても、わたし自身もお子さんたちと同じように「この文字サイズ小さいな」「コントラストが弱く読みにくい」「情報が煩雑で理解できない」「画面がピカピカして目が痛い」と感じることは少なくありません。
これは障害の有無に関わらず、誰しもが日々の中で情報へのアクセスのしにくさを感じているのではないか?ということです。
人間はグラデーションのような生き物だと、私は思います。
Webアクセシビリティの本質は「障害者の方への対応」ではなく「すべての人に対応する」のものではないでしょうか。
はじめにWebアクセシビリティを知った時、私は聴覚・視覚障害のある方の「情報へのアクセスのしにくさ」をうまくイメージできませんでした。
しかし、普段、何気なく感じながらも見過ごしてしまっている違和感こそ、Webアクセシビリティへの理解の一歩ではないかと思います。
この考えは、弊社のVALUEの一つである「自分ゴト化を徹底しよう」にも通じると思っています。
以前の私のように、Webアクセシビリティを難しく捉えている方がいらっしゃいましたら、この記事が取っ掛かりになれたら嬉しいです。